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    <title>双式文芸書庫</title>
    <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com</link>
    <description>双式文芸書庫・小説更新情報</description>
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    <copyright>Copyright ©2026 透水.</copyright>
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    <item>
      <title>「居城の花」 - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19300</link>
      <pubDate>Mon, 19 Feb 2024 10:16:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　その門は、堅固な城塞都市であったことを誇示する城壁を従えながら、控えめな大きさであった。しかしそれは正門と比較した場合の話であり、数人がかりでなければとても動かせない｜閂《かんぬき》も備えるほど立派なものだ。浴びる陽光がわずかなおかけで、暗く沈んで見えるそれは、本来以上の威圧感を振りまいているようだった。
　テルデの北に位置するこの門を、街の中から見上げる男がいた。小綺麗だが着古された外套を羽織り、手には買ったものらしい果物が詰まった袋を抱えている。誰かを待つ時間に飽き、見るものが門しかない、というような風情であった。
　そこに、にぎやかな中心部のほうからひとりの男が走ってきた。どこかの店の主らしい｜出立《いでた》ちだ。通りかかる街の人々には、身なりの整ったこの男が何かを頼み、それを果たしに主人が来たように見えただろう。
「失礼いたします。……よろしいのですか、お顔を隠されなくても」
「...]]></content:encoded>
    </item>
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      <title>テルデの守り手 - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19298</link>
      <pubDate>Mon, 12 Feb 2024 09:54:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[「すべては、ゼレセアン様がフェルティアード様の騎士だったがゆえです。いち住民や、旅人からの通報であったなら、我々はせいぜい、調査と犯人捜し止まりだったでしょう。アレンの詳細な……まあ今回は偽りだったのですが、その経験を、ゼレセアン様が我々にお伝えし、さらに気にかけてくれたことが幸いしたのです」
　しかし、とシトーレは続けた。
「ゼレセアン様は大変正義感のお強い方だった。知り合った少年のために、賊を少しでも弱らせようと動いてくれた。これは、誰も責めようのない誤算でしょう」
「無断で事を起こしたのは、責められるべきだと思うがな」
「それは悪かったと思ってるよ……」
　上官に自分の行動を思い出させられ、ゼルはカップの茶をひと口含んで忘れようとした。
「あの事件で、アレンはようやくゼレセアン様が騎士だと信じ、同時にその行動力を目の当たりにすることになった。加えて、｜屋敷《ここ》にお呼ばれしたことで...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>アレンの告白 - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19297</link>
      <pubDate>Mon, 05 Feb 2024 09:07:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　屋敷に帰ってからの時間は、瞬く間に過ぎていった。ゼルは、自室に待機していた医師の診察と治療を受け、ケイトとアレンは客間をあてがわれていた。昼の時間も跨いだため、ゼルのところには昼食が運ばれていた。おそらく、ふたりにも同じ扱いがされただろう。
　この昼食を届けてくれたニールは――木の枝のような虫を思い出させる細さの、例の青年だ――、フェルティアードからの伝言も携えていた。その中身は、三時に談話室に来るように、というものだった。どうやらそこで、なぜフェルティアードがあそこにいたのか、なぜアレンまでが召集されたのかという話をするようだ。
　屋敷の探索をとっくに済ませていたゼルは、一階にある談話室の場所は知っていたので、遅れず到着した。むしろ早いくらいだったが、そこにはすでにケイトがおり、食堂ほどではないが、長い机の席のひとつに、ちょこんと座っていた。ぱたぱたと部屋を整えて回る使用人たちに、せわ...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>制圧の呼号 - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19295</link>
      <pubDate>Mon, 29 Jan 2024 11:33:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[「フェル、ティ……！」
「そんな……本当に旦那様が！？」
　ゼルとケイトの口から漏れたのと同じような驚きの声は、広場の民衆の最前からも起こり、全体へ及んでいった。賊はもちろんだが、警備隊すら目を白黒させている。
　ゼルは、ケイトの背中に腕を回して身を寄せ、もう片手で棍棒のように長銃を握り締めて、第二の脅威であったレドの動きを目で追っていた。彼らの急な仲間割れを利用して、ケイトの身柄を民衆の中に押し隠そうと思ったからだ。だがその行動も、フェルティアードがここにいたという衝撃で、完全に止まってしまっていた。
　フェルティアードは首を動かさずに、その視界内を｜一瞥《いちべつ》した。そして対するレドに目を合わせると、号令を発した。
「四班、五班はそれぞれオイユ通りと北門へ向かえ！　細路地に馬が隠してある、確保しろ！」
　それにも関わらず、指示された場所へ即座に走り出す警備隊員はひとりもいなかった。...]]></content:encoded>
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      <title>決潰への一手 - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19294</link>
      <pubDate>Mon, 22 Jan 2024 10:24:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　通りに出たゼルは、来た時とは違い、賊に姿を隠されることはなかった。ゼルが走り出したとしてもすぐに捕まえられる間合いに、彼らは散っていたのだ。散ったとしても、彼らがゼルを監視しているのは、誰が見てもわかる。
　額に巻いた青紫の布をなびかせ、歩いていくレドのそばにはケイトと、ケイトの動きを封じている例の男がいる。これでは、通行人や店の人間が異常に気づき、通報されるのも時間の問題だ。
　こいつらは、なぜわざとそんなことをしてる？　人々の注意を引いて、何の得が――いや、注意を引くのが目的なのか？
　自分やケイトだけでなく、テルデの民まで巻き込むつもりか。ゼルが総毛立った時には、サパール広場はもう目の前だった。
　広場の中央に立つ石塔は、かつては街道の道標だった、という話をケイトから聞いたことがある。目印にされることも多いそこに、怪しげな顔の見えない男と、両手を背に回され満足に動けなさそうな女――...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>取り引き - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19293</link>
      <pubDate>Mon, 15 Jan 2024 09:47:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　入室を許可され、部屋に入ったゼルの足取りは重かった。それがゼル自身の思い込みではないことを、フェルティアードの探るような顔つきが証明していた。
　変わった予定とやらで、普段より遅い時刻ではあったが、フェルティアードは今までと同じように椅子に座り、広い机を従えている。それが見えただけで、ゼルはなんとか心を落ち着かせることができた。
「ここの会話、外には聞こえないよな」
　開口一番の台詞に、フェルティアードの眉がしかめられた。
「仕事の話に聞き耳を立てるほど、使用人たちは物好きではないが。不安なら人払いをするぞ」
　ゼルとて彼らを疑う気はなかったので、ならいい、とフェルティアードの提案を断り、彼の机に手紙を置いた。
「読んでくれ」
　フェルティアード卿の騎士殿へ、としか書かれていないそれは、すでに封が切られている。フェルティアードが覗き込んだゼルの目は揺れていた。今にも大声で叫び出しそうなの...]]></content:encoded>
    </item>
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      <title>揺らう矜持 - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19291</link>
      <pubDate>Mon, 08 Jan 2024 09:11:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　動かない人の｜間《あいだ》を抜けるのは、人の流れのある通りを無理やり進むよりも骨が折れた。ようやくひらけたところは、通りに面した一軒の酒場であった。両開きの戸は全開になり、石畳の地面には、破片と化した瓶の成れの果てや、傷だらけになった椅子が横たわっている。
　扉の奥からは、なだめる複数の声と、それに反抗する男の声が聞こえてくる。まさか、強盗の類だろうか。
「まったく、また彼ですか」
　呆れたようにつぶやいたのは、警備隊を引き連れて現れたシトーレだった。ふたりの隊員をそばにつけ、残りは散乱した家具の片づけを始めたり、野次馬の立ち入りをとどめたりしている。
「知り合いなんですか？」
「しょうもないことですぐ熱くなって、暴れ出す常習者でしてね。幸い怪我人を出したことはないのですが、こうやってものに当たるのですよ」
　外が明るいせいで、中の様子はよく見えない。その薄闇から木でできたカップが飛んで...]]></content:encoded>
    </item>
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      <title>領主の真性 - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19290</link>
      <pubDate>Mon, 01 Jan 2024 09:51:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　シトーレに半歩遅れて歩きながら、ゼルは彼からテルデの名所案内を受け続けていた。初めて訪れる者なら、誰でも目を奪われるものはもちろんだが、言われなければ気づかない小さなものまで、とにかく枚挙にいとまがない。それに、あそこは何週先まで工事をしているとか、ここは何日前に模様替えをしたとか、情報も新しい。使用人の長でもある彼が、一体いつ外に出ているというのだろう。
　そんなシトーレが、ただのんびりと案内人を務めているだけでないのは、ゼルも気づいていた。そのくすんだ碧眼は時折、特に物陰や細道へと向けられた時に、輝きを取り戻しているように見えた。
　要所に立っていたり、巡回中の班に会うたび、シトーレは彼らと言葉を交わし、何事かなかったかを確認していた。シトーレとの散歩が始まってから十分は経っただろうか。幸い、大きな揉め事も騒ぎも起きていないらしかった。
「素晴らしいですね。こんなに安全な街は、そう多...]]></content:encoded>
    </item>
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      <title>巡視 - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19289</link>
      <pubDate>Mon, 25 Dec 2023 12:17:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[「信じらんねえ。フェルティ様にあんな口きいてるなんて」
「会うなりそれかよ。軽蔑したきゃ勝手にしろ」
　足元に座り込み、いじけるように向こうを向いているアレンに、ゼルはそう言って通りを眺めた。文句を言ったらさっさと消えるものと思っていたので、少し居心地が悪い。
　警備隊の編成にうまいこと｜ね《・》｜じ《・》｜込《・》｜ま《・》｜れ《・》｜た《・》ゼルは、この市街で一番大きい宿の壁を背に、不審な者はいないか用心深く往来を見張っていた。騎士の赤い外套のおかげで、通りかかる人の半分以上と目が合う。
「軽蔑はしないよ。フェルティ様、怒ってるようじゃなかったし」
「“フェルティ様”って言っちゃっても、何も言われなかったしな」
「う、うるさいな！　懐の広い方なんだよ、ゼルのあんな態度を許すくらいなんだからさ！」
「あいつが、ああいう態度できるもんならやってみろって言うからやってるんだ、おれが貴族みんな...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>過ち - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19287</link>
      <pubDate>Mon, 18 Dec 2023 08:50:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　班長に計画のすべてを話し終えた頃には、屋敷はもう目の前だった。広い庭園を横断せずに済む裏口に向かうと、ちょうどケイトが戸を開け放ったところだった。
　班長は賊の捕縛時点で、一報を｜携《たずさ》えた隊員を屋敷に送っていたので、使用人たちはすでに迎えの準備を整えていたのだ。だがアレンがいることは想定外だったので、彼は通りかかる使用人全員に目を向けられることになった。
　当然、軽蔑の眼差しなどではなかったが、どんどん力がこもっていくアレンの肩を、ゼルは書斎の前に着くまで何度も撫でてやった。
　ゼルはまず、扉に控えていた使用人にエティールについて聞いてみた。部屋にはいないらしく、ゼルはこのことをアレンに伝えた。高まる緊張の中で、わずかながら安心を取り戻せたのか、アレンはぎこちなく、笑顔のような表情を作った。
　書斎に入ると、フェルティアードは机のそばで、ゼルたちのほうを向いて立っていた。金色にほ...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>とある商店の騒動 - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19286</link>
      <pubDate>Mon, 11 Dec 2023 11:35:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　ジャクス・ベルナーの頭の中は、後悔という言葉で埋め尽くされていた。それ以外の感情も、それを打開するための思考も、存在し得る隙間などないに等しかった。こんなことになるのなら、身の丈にあった――そもそも手を出すこと自体間違いだったのだが――小さな取引だけにしておけばよかったのに。
　どんなに身を縮こまらせようとしても、盛りを越えた大輪の花のように、その身体がしぼむ気配はなかった。本業を手広くやるつもりはなかったので、縦も横も大した広さのない室内では、彼の大きさは余計際立った。
　ベルナーの佇むカウンターの向こう側には、彼よりひと回りは小さい――と言っても十分に働き盛りとわかる｜な《・》｜り《・》の男が三人いた。おまけに閉店を装っている都合上、通りに面した二枚と、隣の店との｜間《あいだ》にある一枚の窓には、しっかり布で覆いがかけられている。明かりといったら蝋燭しかない店内は、余計に狭苦しく感じ...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>足下の会談 - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19285</link>
      <pubDate>Mon, 04 Dec 2023 12:37:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　ゼルたちが進んだ通りは、人を押しのけないと進めない、という混みようではなかったが、その密度にゼルはまだ慣れていなかった。こうなると、ケイトの歩みが軽やかに見える。彼女の歩いた道筋を追うことも、一度や二度ではなかった。
　道中には警備隊の姿もあり、中にはゼルが騎士であることを知っているようなそぶりを見せる者もいた。だがおそらく、警備隊にはゼルの正体がばれないように、とでも通達されていたのだろう。彼らは皆、特別ゼルに視線を向けることを避け、巡回を続けたり、周辺に目を光らせていたりしていた。
　聞きそびれていたマルドの性格や好物のことを、ケイトから聞きながら歩を進めるうち、ゼルは、数日前に屋根に登ろうとした地域に近づいていた。性格にもよるだろうが、ゼルの経験上、はるか遠くまで逃げてしまう猫はそういない。ちゃんと帰ってくる習慣があるのだから、マルドはまだこのあたりにいるはずなのだ。
　ゼルは一度...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>成すべきこと - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19284</link>
      <pubDate>Mon, 27 Nov 2023 12:42:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　次のゼルの休日は、またもや晴天に恵まれた。しかし本人はというと、まるで曇天の気分であった。先日とは違い、彼の気持ちは完全に顔に出ていたので、ケイトはすぐそれに気づいてしまった。
「あの……ゼレセアン様。もしご気分が優れないようでしたら、今日はお部屋でお休みになってはいかがでしょう」
　隣り合って歩く騎士は、約束を優先させ無理をしていると思ったのだろう。機嫌を伺うように、まさにおそるおそるといった様子で、ケイトはゼルに視線を向けた。
「お願いはいたしましたが、本調子でないのをおしてまでとは申しませんわ。お身体は大事にしていただかないと」
　それを受けてゼルのほうは、なぜケイトはこんなに怖がっているのだろう、と疑問に思ったおかげで、ケイトが恐れていた表情はきれいさっぱりなくなった。そして、彼女にそんなことを言わせてしまうほど、“そのこと”で頭がいっぱいだったことに気づいた。
「ご、ごめんケイ...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>守護の騎士 - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19282</link>
      <pubDate>Mon, 20 Nov 2023 13:10:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[「わたしの街で人殺しとは、穏やかでないな」
　報告を終えると、今回は椅子に腰かけていた部屋の主人はそう言った。同時に、今まさに犯人を目にしているかのごとく忌々しげに、黒髪の合間から覗く目を細めるので、広い机を挟んで立っていたゼルは、言われのない緊張感を浴びせられる羽目になった。
「シトーレから、賊らしきものがうろついているとは聞いていたが」
「じゃあ、そいつらが」
「断定はできん。別の集団の可能性もある。そうだったところで、そこまで賊どもが｜蔓延《はびこ》っているとは考えたくないがな」
　ゼルは自分の村と王都、そして王都への旅の途中で泊まった集落しか知らなかったが、このテルデはきっと巨大な街に分類される規模だと思っていた。それだけ大きければ、隠れる賊もひとつやふたつでないかもしれない。
「しかし、わたしたちが戻る前から、巡回は強化していると言っていた。それをやつらが気づかんはずはない。見つ...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>ロット通りの少年 - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19281</link>
      <pubDate>Tue, 14 Nov 2023 10:11:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　閉め切る寸前のところで扉を止め、その隙間から外の様子をさっと見回してから、やや大きめの音を立てて、少年は今度こそ扉を閉めた。大人が全力で蹴破れば、とても耐えられないような錠をかけると、すでに卓に案内されていたゼルとケイトのところに、少年は戻ってきた。
「見慣れないやつはいなかったから、多分大丈夫。いいよ、座ってて。母さんはまだ帰らないし」
　｜煉瓦《れんが》色の髪をした少年はそう言うと、彼には少々高い椅子を引き、腰かけた。ゼルはケイトと顔を見合わせてから、同じように座った。
　年の頃は十歳を越えたくらいだろうか。背は高くないが、それに比べると大人びた顔つきをしていた。あんないたずらをしてくるのだから、精神は歳相応か、もしかしたらそれ以下かもしれない。そうすると、幼さを薄めているのは、勉学で多くの知識を得ているからか。
　そう見立てたのも、この家に通されてすぐに、何冊かの本が目に入ったから...]]></content:encoded>
    </item>
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      <title>屋敷の使用人 - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19278</link>
      <pubDate>Mon, 06 Nov 2023 11:52:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　屋敷での生活は、何不自由なく、｜滞《とどこお》ることもなく、順調に過ぎていった。屋敷の監督や管理の長とはいえ、自分はただの使用人ですので、と言いながらシトーレが勉学の教本を取ったが、指導を受けたゼルは、それがひどい謙遜であったことを理解した。
　聞けば、貴族位を継ぐ前、まだ“フェルティアードの子息”だったフェルティアードに対し、教師の真似事をしたこともあったのだという。しかし真似事程度でないことは、ゼルにもよくわかった。でなければ、叔父に心の中で謝るほど、知識を求める衝動に駆られるはずがない。そういったこともあり、座学への抵抗感はやや薄らいでいた。
　どちらかといえばゼルは体を動かすほうが好きだったのだが、残念ながらその指導をするのは使用人の長でなく、あの寡黙な大貴族であった。治りかけであろう脚の怪我もあり、激しい動きを伴う稽古は当然なかったが。
　思えば、彼から直接何かを教えられるとい...]]></content:encoded>
    </item>
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      <title>晩餐 - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19276</link>
      <pubDate>Mon, 06 Nov 2023 11:52:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　ゼルたち三人が歩き出すと、シトーレ以外の使用人のほとんどは、持ち場に戻るためか散り散りになっていった。ごく数名さり歩みを妨げないよう、ふたりの貴族の背から、外套を外してやっていった。
「ゼレセアン様のお部屋は、旦那様の書斎からそう遠くございません。図書室や稽古場もすぐですので、快適にお過ごしいただけるかと」
　フェルティアードと並んで進むシトーレは、こういった丁寧な調子で、屋敷の説明をしてくれた。なんとか王宮の｜煌《きら》びやかさに慣れていたゼルは、それに比べればひっそりとして、落ち着ける内装――とは言ってもぞんざいに触れるには｜憚《はばか》られた――のおかげで、平静な心でシトーレの説明に耳を傾けることができた。
「ところで、ゼレセアン様はこういったお務めは初めて、と聞き及んでおりますが、相違はありませんかな？」
「は、はい。……お恥ずかしながら」
　振り向きざまの問いに、ゼルは尻すぼみ...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>世話係 - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19277</link>
      <pubDate>Mon, 06 Nov 2023 11:52:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　生まれて初めての豪勢な食事を堪能したゼルは、晩餐の終幕と同時に、フェルティアードから書斎に来るよう命ぜられた。彼についていく形で向かってもよかったのだが、数時間前の馬車の旅が思い出されたので、飲み物を一杯もらい、それをゆっくりと、何回かに分けて飲み切ってから席を立った。
　食堂に向かう道すがら、フェルティアードの書斎は使用人から聞いていたので、ゼルは迷わずそこへたどり着いた。入口のそばに控えていた使用人は、ゼルを見つけるとすぐさま部屋の扉を叩き、騎士の到着を告げていた。
　書斎は、フェルティアード自身の屋敷ということもあってか、王宮の倍の広さはあった。カーテンが引かれた窓が並び、その反対側の壁の大部分は、本棚で占められている。それらを従えるように堂々と、やはり大きな机が佇んでいたが、フェルティアードはその席にはいなかった。明かりが届きにくい部屋の隅、そこにある本棚から一冊を取り出し、振り...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>尋ね猫 - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19280</link>
      <pubDate>Mon, 06 Nov 2023 11:52:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　雲の少ない青空は高く、太陽は力強く地を照らしている。思い出したように吹く風は、肩かけにしたうぐいす色の外套をほどよく揺らし、ひどい暑さを感じることもない。隅々まで喧噪が満ちる街は、まさに大貴族が住まうにふさわしい。予定になかった買い物の、ひとつやふたつをしでかしそうな陽気が心地よかったが、ゼルの心の半分ほどは、薄暗いもやに包まれているようだった。
「あの……本当にすみません。よく考えたら、テルデが初めてのゼレセアン様に、こんなことをお願いするなんて……」
　｜傍《かたわ》らのケイトはそう言って、ふたのついた編みかごの取っ手を両手で握りしめた。屋敷にいる時の制服より、多少派手やかなスカートがよく映える。
　そういった服のせいなのか、それとも色のせいなのか。ゼルとそう変わらない背丈にも関わらず、首も腕も、少し力を入れ過ぎたら折れそうなほど華奢に見えた。そんな彼女は、今やすっかり俯いてしまって...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>歓待 - 居城の花</title>
      <link>https://blnsrk.kashi-hondana.com/author/page/1061/section/19275</link>
      <pubDate>Sun, 05 Nov 2023 20:25:00 +0900</pubDate>
      <description>晴れて騎士階級を叙され、フェルティアードの治める領地にやってきたゼル。屋敷で出会った新米使用人・ケイトの依頼のために街を散策するさなか、ゼルは賊の存在を知ることになり……
近世西洋風異世界を舞台にした、若き騎士と少女の物語。「狼の騎士」の続編。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　それはとうに予想していた状況だった。暇で退屈で居心地が悪くて、きっと自分は外の景色ばかり眺めているのだろうと踏んでいたゼルだったが、まさにその通りになっていた。すぐ横の――と言っても子供ひとり分の隙間はあったが――貴族の男は、腕を軽く組んだ姿勢を崩さず、目を伏せているか、時たま思い出したように遠くを見ているだけだった。もしかしたらほかに何かしらの動作をしていたかもしれないが、ゼルが盗み見たものは、たったのこれだけだった。
　当然、会話などあるはずがない。いや、するにはしたのだ。今向かっているのはテルデという大きな街で、そこにあるフェルティアードの屋敷が目的地だということはわかっている。だから、街の様子や、屋敷での予定などを聞いたのだが、それで終わってしまったのだ。ゼルが話の種を探しているうちに、分厚い沈黙の壁がそびえ、ふたりを隔ててしまっていた。進んで話したいわけでもなかったので、ゼルは...]]></content:encoded>
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